小さな赤い古時計
僕が長年使用していた目覚まし時計が使えなくなってしまいました。
タイマーをセットすると、その時間になると鳴る代わりに時計の針が止まってしまいます。
目覚まし時計は部屋の一部になっていて空気のようでしたが、止まってみてなぜ僕の部屋にあったのか思い出しました。
時は1992年8月、僕は愛着のあった大阪より地元長野に戻る事になりました。
当時僕は3才年上のお姉さんにフラレキックボクシングのジムに入門、自分が納得するまでは彼女を作らないと決めて用事のない日はほぼ毎日ジムに行き、休日は京都に行くかプラネタリウムか、格闘技の試合を見に行っていました。
そんな屈折した青春時代でしたが、夕方掃除に来ていた40才位のパートの女性は例外でよく話をして夕方になるのが楽しみでした。
乾いた心に咲いた一輪の花、多少時期が過ぎても花は花、僕はやましい心は抜きで神様にお供え物をするように喜んで欲しいと思いどこかに行く度にお土産を買ってきたりしていました。
プラトニックな関係が続いていましたが、父親の急病により長野に帰る事になり餞別に目覚まし時計とTシャツをもらいました。
当時はメールは無かったのでしばらくの間手紙が来ていましたがいつしか自然消滅していました。
その後、大阪支店の人と話す機会があり彼女が体調不良でパートを辞めたと聞きました。
大阪での試合が決った時、彼女にチケットを送りましたが来なくてそのまま彼女と音信不通になってしまいました。
日々の生活に流されて彼女の事はすっかり忘れていましたが、時計が壊れた時に彼女の事を思い出しました。17年間灯台のように時を刻んでくれた感謝とともに…
小さな赤い古時計
思い出の時計
17年休まずに動いてきたありがたい時計さ
大阪から旅立つ日に餞別でもらった時計さ
今はもう動かない赤い古時計‥
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