本 愛人(エイン)剥がされた記憶 小川竜生

長野市立南部図書館さんで借りてきた小川竜生さんの「愛人(エイン)、剥がされた記憶」を読みました。

時は2002年、主人公の桐生は50才で広告代理店を経営しています。妻と17才の娘がいます。かつては羽振りが良かった会社も不況で仕事が減り四苦八苦している桐生ですが妻とは家庭内別居状態で家の近くの飲み屋に行くのが日課になっていました。桐生はいつしかその店に出入りする韓国人モデルのキムに恋心を抱くようになりました。

神戸に出張が決った桐生はキムを神戸に誘ってみましたが思わずOKの返事をもらい浮かれ気分になりました。その頃桐生は娘から「母親が夜な夜な外出している」と聞かされました。

ある夜帰りが遅くなった桐生は駐車してあるクルマの中で濃厚なキスをする妻を見つけました。仮面夫婦で肉体関係は疎か会話さえした事がない桐生ですが妻が他の男と会っているのを見ると複雑な気分になりました。


桐生はキムと神戸に行きましたがキムを口説く事に成功しました。その時キムは「日本人の男の人はみんな泥棒です。」と呟きました。桐生はかつてこの言葉を聞いた事がありました。桐生は17年前に韓国に接待旅行に行った時にキーセンに惚れ羽振りが良かった桐生は妻が妊娠をしていながら何度も韓国に通いそのキーセンを愛人にしました。その愛人を初めて抱いた時桐生はキムが言った「日本人の男は泥棒」の一言を言われたのでした。


神戸でキムとの仲が急接近した桐生ですが夜な夜な妻が外出するのは変わらないようで桐生は私立探偵を雇い妻を監視しましたがある日決定的な証拠を掴みました。その頃桐生の会社にビデオテープが送られて来て再生すると奥さんと知らない男の肉体関係が映っていました。

自宅に帰り妻にそのビデオを見せた桐生ですが奥さんも開き直り離婚騒動に発展しました。桐生は行きつけの飲み屋に行くとキムがいて韓国に帰るという話をしてきました。妻と冷却期間を置きたい桐生はキムと韓国に行く事にしますが‥


予備知識が無く題名を見て借りましたがサスペンス編で一気に読み終わりました。
ストーリーは2001年、冬大磯、
1985年、釜山、
1985年冬、慶州、
1986年冬、大磯、終止符、
2002年、大磯
2002年、初春、釜山、
2002年、大磯、終焉、
の7章に分けられます。


1985年の慶州での桐生と愛人の触れ合いが羨ましくもあり眩しくも感じました。僕は韓国には行った事はありませんがソウルオリンピック前の古き良き時代の韓国の様子とキーセンとお客の関係から変わって行く過程に魅せられ引き込まれて行きました。

ソウルオリンピック前の韓国でも反日感情はあったと思います。桐生の愛人のお父さんも日本に強制連行され日本人嫌いだと思いますがあえて桐生を自宅に案内した愛人の気持ちに泣けるものがありました。


妻が知らない男とクルマの中で濃厚なキスをしていて通りすがりのクルマのライトにその姿が浮かびあがる場面や桐生が妻を問いつめる場面、キムとの情事の場面と愛人との釜山での食事の場面、東京ホテルやお菓子を食べた慶州での出来事等と官能が交じり合った混沌とした展開が面白かったです。


僕は独身、金無しで子供や愛人とは縁のない生活をしていたので桐生の身勝手さや家庭を省みない気持ちにイライラしながらも愛人との思い出や娘の優しさが羨ましかった作品でした。僕は恋人も愛人も持つ事はないと思いますがもしも持った時は誠意が大切だな‥と思いました。


小川竜生さん、1952年大阪生まれ、1993年作家デビュー、ハードボイルド系の作品が多いそうです。

「愛人(エイン)剥がされた記憶」2002年6月25日初版、祥伝社、308ページです。  


2013年01月02日 Posted by プラネマン at 22:58Comments(0)

奇跡のピアニスト辻井伸行 魂の旋律

昨日1月1日にBS朝日で放送された「奇跡のピアニスト、辻井伸行、魂の旋律、指揮者佐渡裕との10年」を見ました。


人気ピアニストの辻井伸行さんは今年の4月に僕の住んでいる長野市に来ますがコンサートのチケットは即日完売で手に入りませんでした。以前僕のブログに辻井伸行さんの出演した番組をブログアップしたところ携帯電話で投稿している僕のブログにも普段の何倍ものアクセスがあり辻井伸行さんの人気を実感しました。最近では映画音楽でも活躍している辻井伸行さんですがプロデビューから5年辻井伸行さんの現在を描いた特番の放送を知った時放送がとても待ち遠しく感じました。


世界的指揮者の佐渡裕さんと辻井伸行さんの出会いは11才の頃、辻井伸行さんがシベリウスのもみの木を演奏したCDを佐渡裕さんに送りそれを聞いた佐渡裕さんが感激した事に始まるそうです。辻井伸行さんが13才の頃佐渡裕さんが主催するヤングピープルコンサートに辻井伸行さんを招待して2008年には辻井伸行さんと佐渡裕さんの共演CDがオリコン上位にランクされたそうです。佐渡裕さんが主催する富士河口湖音楽祭に辻井伸行さんが招待された場面を中心に放送されました。


辻井伸行さんの演奏が放送されドビッシーのアラベスク第1番、第2番月の光、

ショパンの別れの曲、革命
リストのラ、カンパネイラ
リゴレット、パラフレーズ等の演奏シーンが放送されましたが新年早々に素晴らしい演奏が聞け感激でした。
富士河口湖音楽祭開催中にスケジュールが合い辻井伸行さんのお母さんが講演会をしてその時の様子が放送されました。

辻井伸行さんのお母さんは3冊の本を書きましたがお母さんは辻井伸行さんを家の中に籠もらせず美術館や旅行等に連れ出していたそうです。辻井伸行さんが幼い頃行った博物館に古いピアノがあり許可をもらい弾いてみたところ周りに人垣が出来て辻井伸行さんの演奏に聞き入っていたそうでその感激が辻井伸行さんの演奏の原点になっているそうです。辻井伸行さんの才能を引き出したお母さんは本当に素晴らしいと思いました。


続いて富士河口湖音楽祭2012で辻井伸行さんのソロコンサートの様子が放送されました。

辻井伸行さん作曲のベルリンの小路は1分ほどの作品ですが1分の中に素晴らしさが凝縮した作品でした。同じく辻井伸行さん作曲のベネチアの風に吹かれてとジェリーへのオマージュが演奏されました。作曲家としての辻井伸行さんの実力に息を飲むばかりでした。

辻井伸行さんがてがけた映画音楽で「はやぶさ」では映画全編の音楽を作ったそうです。その時の打ち合わせの様子が放送されましたがプロデューサーが辻井伸行さんの音楽に感動して泣き出す場面がありました。場面は戻り富士河口湖音楽祭の会場ではやぶさのテーマ曲が演奏されましたが3千人の観客の割れんばかりの歓声が印象的でした。そして一番最初の映画音楽の神様のカルテが演奏されました。


辻井伸行さんに影響を受けた人々という事で兵庫県の三木高校吹奏楽部の皆様が放送されました。この高校は共学ですが吹奏楽部は全員女生徒だそうです。辻井伸行さんが作曲した神様のカルテを吹奏楽用に編曲して演奏していました。辻井伸行さんの曲が広く愛されているんだな‥と感じました。盲学校の生徒も辻井伸行さんの活躍に励まされピアノに打ち込んでいる様子が放送され辻井伸行さんの音楽は人々に勇気を与えていると感じました。


佐渡裕さんが指揮、総監督をしているサントリー1万人の第9に辻井伸行さんがゲスト出演しました。大阪城ホールに1万人を集め第9を演奏するイベントですが辻井伸行さんはそこでラフマニノフを演奏していました。大阪のフェスティバルホールが改修されこけら落としに佐渡裕さんと辻井伸行さんが出演、BBCフィルと共演するそうです。もちろんチケットは完売ですが‥2時間の特番はあっという間に終了しました。長野市に来るなら行きたかったな‥そんな思いが強まりましたが完売なら諦めるしかありません‥2013年も活躍が楽しみな辻井伸行さんですが今年も多くの人々を癒して欲しいと思います。  


2013年01月02日 Posted by プラネマン at 13:29Comments(0)音楽系番組、演奏会TV放送