ギターに祈りをこめて

主人公の中村雅俊さんは、画家志望の青年でしたが仕事で実績を残し重役まで出世、惜しまれながら退職します。
退職を機会に長年連れ添った奥さんと別れ愛人が経営する会社に勤め始めます。
奥さん役の原田三枝子さんは離婚後有名翻訳家の家政婦として働き始めます。翻訳家に気に入られたヒロインはあるパーティーに参加して新しい出会いがあり輝き始めます。
対称的に主人公は大手建設会社の重役の看板が無くなったり、枠組みが変わり自分のやり方が通用しなくなってきたところに家事も奥さんに任せきりだったので何もできず落ち込んだ日々を過ごしています。
そんな二人が一人娘の出産で再会して…
主人公夫婦を中心に三組の同年代カップルのラブレターが綴られています。
僕が感動したのは魚屋を営む友達夫婦、夫は若い頃ビートルズに憧れてバンドを始めますが、追っかけをしていた中で一番可愛かった娘と結婚しますが今はその面影がなく尻に引かれています。
夫は糖尿になってしまい奥さんとウォーキングをしていますが楽器屋に飾ってあるギターを眺めるのが日課になっています。
ある日ギターが無くなっているのにがっかりしますが奥さんが脳の病気で入院する事になります。
自宅の押し入れの中に夫の快気祝いで欲しかったギターが買ってあったのを発見します。
夫は意識のない妻のもとで二人の思い出の曲を歌います。
そのひたむきさに思わず目頭が熱くなってしまいました。
ギターに託した思い、主人公の背中を押したギターの音色、個人的にはギターに祈りをこめて意識のない奥さんに語りかけるシーンが気に入っています。
この映画の中では一流企業の重役や医者、世の中の女性の憧れとされている売れっ子翻訳家など、知らない人が見れば羨ましく思う人生を送っている人達が登場しますが、それぞれ葛藤しながら生きているのを見ると悩みや葛藤に向かいあって生きていかなければ、と思いました。
人によって立場や感じ方は違うでしょうが、ここに登場する三組のカップルの生き方がこの映画を見た人に勇気や希望の前向きさを与えてくれると思います。