そろばん侍生き方に感動しました

江戸時代後半、金沢藩で代々会計を担当していた猪山家の8代目直之が激動の時代を武力でなくそろばん1つで生き抜いて行くそろばん侍の物語です。
ストーリーは大きく3つに分けられます。第1部は直之が勤める加賀藩で米の横流しがあり直之が帳簿から米の横流しに気が付きます。直之の上司は直之を目の上のたんこぶのように思い能登に転勤を命じ臭いものにふたをしようとします。やがて不正が藩のトップに知れて直之の上司は罷免になり直之は能登行きを逃れ出世して行きましたがいつの時代も心正しく生きなければいけないと思いました。
個人的には第2部が好きで直之の父が出世したため江戸と金沢の2重生活をしたり手当てより出費が続き猪山家は慢性的な赤字財政になります。直之の子供が4才になり親戚縁者にお披露目をする時すでに猪山家の借金は直之と父の収入の2倍あり利子が18%くらい増えていく緊迫財政になっていました。
息子の4才のお披露目では鯛の代わりに絵で書いた鯛を出します。又猪山家の家財道具でお金になるもの全てを売りに出して借金返済に充てます。特に印象的だったのは碁まで売ってしまい貝殻で碁をしたり人間借金があっても生活レベルは中々落とせないものですが周りから何を言われても何を思われても我が道を貫く直之に感激しました。
第3部は直之の息子の物語で直之は息子に猪山家の家計を任せます。ある日直之の息子は4文ほど無くしてしまいますが直之は探してくるように命じます。息子は河原で4文拾い家計の足しにしますが直之は河原に返してくるように命じ息子は反発して二人は小競り合いになります。
直之は収入の中で生活のやり繰りをしてそれ以外の収入を期待するな!という事を言いたかったと分かりましたがお金に対するシビアな考え方が身についたので長い目で見れば息子の財産になっていました。
とかく人は未来に使うべきお金を前借りしてしまったり足りない分はどこかから借りてきたりする傾向がありますがそれと対極のそろばん侍の生き方は新鮮でした。学校では中々教えてくれないお金について考えさせられた秀作でした。